モテないけどセクハラはセクハラだったよね

私はモテる方の人間ではない。はっきり言うとモテない側の人間だ。

何故ならば今まで異性に告白されたことがないからだ。紛うことなきモテない側の、モテない人間に他ならないだろう。

だから異性の好意と思われるモノには敏感で、例えば異性が自分に話しかけてきたり、微笑みかけてきたり、そんな些細な行動だけで「こいつ私のこと好きなんじゃね?」となり、時にお花畑モード、時に苦虫を噛み潰したような気持ちに勝手になって、一人遊園地のジェットコースターとお化け屋敷を楽しんでいる。

 

なのでこの前、元上司から「よかったらご飯に行かない?(二人で)」と言われたとき、フフフと隠れて微笑んだものだ。誘い文句は「仕事の労い」だったが、あーやっぱり?私ってやっぱり、モテないフリしてたけど、既婚男性から見ても魅力的に見えちゃう?わかるわかる~OK!というノリだった。何も考えずにその誘いに乗った。

よくわからない高級車(車内で有名人の誰々と一緒なんだと得意げに自慢された)に乗せられ、行き着いた先は国道沿いのフレンチ料理店。注文されていたのは肉と魚のフルコース。金曜夜だというのに、私達以外の客は誰もいない。無愛想な店主が何事かを呟きながら置いた前菜を、いざ食べようとしたその時に元上司は言った。「俺、実は離婚したんだよね」えっ何それウケる~。思ったと同時に、ヤバイなと思った。その後のせっかくのフルコースの味はしなかった。かろうじて覚えているのは前菜のソーセージ的なやつが美味しかった気がすることだけだ。

その後、星を見て夜景を見た。星を見て夜景を見たのだ。なんでやねん。一回目のデートでフルスロットルかよ。デート本読み尽くした童貞でももっとマシなチョイスするんじゃねえの?知らんけど。お土産はコンビニスイーツとワイン2本だった。なんでやねん。重い。物理的に。時計の針がどちらもてっぺんをさす頃に、コンビニに停めた車はなかなか動かなかった。

元上司は言う。「動物もオスとメスの番になるから…人間もそうだよね」言ってることがよくわからない。何が言いたいのかよくわからない。「俺は自分から好きって絶対言わないから。…何か言いたいことがあるなら言っていいよ」早く、帰りたいです…。

ようやく解放されてから、ああどうしようと頭を抱えた。まず、「私のことを本気で好きだったらどうしよう?」。離婚したということはフリーなわけで、再婚したいとか言ってたし、私を再婚相手として見てるのか?

そして「なんで私なんだろう?」これはすぐにわかった。だって職場でフリーで結婚適齢期の異性って私くらいだし。

同時にその人が可哀想だなという気持ちもあった。あったけど、それ以上に、私は今めちゃめちゃ忙しいってわかっているはずなのに(一年で一番忙しい時期)、なんでそんな話したんだよ。今。ていうか労いとか言ってたけど延々と自分の話ばっかするし、完全に自分を慰めてほしい感じだったし、ただ若い子と話したかっただけだろ、で、あわよくばとか思ってんじゃん。キメエな、マジでキメエ、きもすぎる。死んでほしい。狡い。卑劣だ。可哀想。気持ち悪い。嫌悪感。

いやでもさ、それを置いといたら尊敬できる人じゃん。そうだよ、仕事もできる、相談にも乗ってくれるし、優しい、…優しい言葉も、かけてくれる。ああ、あれ私のことそういう目で見てたから?だから優しくしてくれた?え?キモイ、最悪。

 

かくして私はぐるぐると上記の気持ちと、多忙な仕事、そしてたまに届く元上司からのLINEに押しつぶされ、鬱に半分足を突っ込み、職場で上手く息ができず、常に気持ち悪く、唾液は出なくなった。

私はこの状態をモテないが故、異性の好意に敏感すぎた結果の大ダメージと解釈していたが違った。ほぼ同じような被害を受けていた彼氏持ちの後輩も、大ダメージを受けていた。

そもそも彼氏持ちの女に何してやがんだという話だが、それはそれとして、やはり尊敬していた(過去形)上司が、突然「男性」としてアプローチしてくることの気持ち悪さたるや。しかも、自分の年齢を棚に上げて20代に構ってもらおうとする厚かましさ。すごい。やっぱ20代で時止まってんだこういうやつ。(このへんの分析はよく他の人もやってるので省く)マジで無理。マジで無理だよね~!!!

後輩と「マジキモイね」と言い合って、「どうやったら仕事やめてくれるかな」と話し合う日々。尊敬の気持ちはとうに失せ、ただただ「異性」としての気持ち悪さしか残らない。視界に入れたくない。同じ空間にいたくない。廊下ですれ違わないために、ちょっと遠いトイレに行こう。

 

私がもし、激モテ女性だったらこんな気持ちにならなくても良かったのだろうか?「あ~私って魅力的だもんな、また男に言い寄られたか、適当にあしらっとこ」って出来たかな。どうだろう?どう思います?

逆に言えば、まあ、モテなくても、自分へ好意を向けてくる異性への嫌悪感は感じるもんだなという発見でした。